⚫︎ 消化器

消化管総合 gastrointestinal tract /gut /bowel


・消化管は口腔から肛門までの管状器官であり,食物の消化吸収・運搬,分泌,便の生成,腸内細菌の恒常性維持,生体防御などを担う.

1.基本構造

・消化管壁は4層の基本的構造を有する〔内腔側から粘膜(上皮+粘膜固有層+粘膜筋板),粘膜下層,固有筋層(輪状筋+縦走筋),外層(漿膜または外膜)〕.A7

※胃の固有筋層は斜走筋,輪状筋,縦走筋の3層から成る(参照A-6).

※食道と下部直腸は漿膜をもたず,外膜組織で覆われている(参照A-510).A4

・胃・腸管上皮は原則として単層円柱上皮である.

・円柱上皮は管腔からのバリアー機能のみならず,吸収,分泌,種々のサイトカイン,ケモカインの産生などを行う生体防御細胞である.

※口腔〜食道,および肛門管(肛門縁〜歯状線)は重層扁平上皮から成る.

 消化管の基本構造

 

2.神経

・消化管は,腸管神経系(Auerbach神経叢,Meissner神経叢)と,2種の外来神経(交感神経,副交感神経)による自律神経に支配される.

 消化管の神経支配

Auerbach神経叢は筋層(輪状筋層と縦走筋層との間)に存在し,蠕動運動の調節に関与する.18

Meissner神経叢は粘膜下層に存在し,腺の分泌などに関与する.

・腸管神経系は中枢神経系と接続するが,自律的に運動・分泌反応を引き起こすこともある.

・交感神経は消化管運動を抑制し,副交感神経は促進する.

 消化管を支配する交感神経・副交感神経(参照J-37

*迷走神経腹腔枝は胃の運動亢進を来すが,胃酸分泌には関与しない.

3.血管系

・消化器への血流の大部分は,腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈によって供給される.

※それぞれ,胎生期の前腸(食道,胃,十二指腸近位部,肝,膵,胆囊),中腸(十二指腸遠位部〜横行結腸近位2/3),後腸(横行結腸遠位1/3〜直腸)にあたる部分を支配する.

※胸部上・中部食道は胸部大動脈とその分枝から直接血流を受ける(参照A-5).

 腹部大動脈の枝 15

 

 消化器系の血流の流れ A1112

医療情報科学研究所 編:病気がみえる vol.1 消化器.第6版,メディックメディア,2020p.6より改変

※門脈系と上大静脈系は食道静脈叢を介し接続しているため,門脈閉塞や門脈圧亢進時には側副血行路として機能し,血液は左胃静脈食道静脈叢奇静脈上大静脈という経路で心臓へ戻る.血液量が増加すると,静脈叢が著しく拡張するため静脈瘤を生じる(参照A-40B-12).

※門脈圧亢進症に,時に脾腎静脈シャントができる.肝性脳症の原因の一つである.

4.リンパ系

・大動脈前リンパ節である腹腔リンパ節,上腸間膜リンパ節,下腸間膜リンパ節を介して乳び槽に至る.

・腹腔リンパ節は腹腔動脈,上腸間膜リンパ節は上腸間膜動脈,下腸間膜リンパ節は下腸間膜動脈の流入域より,それぞれ合流する.

※食道のリンパは,食道上部深頸リンパ節,食道中部後縦隔リンパ節,食道下部腹腔リンパ節から成る.

※リンパ節はリンパ流を調節し,免役チェック機能を有する.

 腹部消化管(直腸下部まで)に関連するリンパ系

※食道癌や肺癌などでのリンパ節郭清時に注意が必要.

 全身のリンパ系の概略

左鎖骨上窩リンパ節をVirchowリンパ節という.